緋色シリーズラスト@スコバボ
「スコッチ、ですよね」
久し振りに単語を口にした瞬間、忘れもしない彼の最期が先日あったことのように思い出した。
まるで神様に隠されていたようだ、なんて考えて、彼との記憶が色褪せている事実を知る。
振り切るように、忘れることのなかったその名前を今度こそ助手席の女性に知られぬよう感情ごと飲み干して、なんてこともなかったかのようにハンドルを強く握り直した。
脳裏に過ぎった子供の、冴える青色を回想しながら。
本当は震えそうな手を誤魔化したかったなんて、誰にも言えやしないだけなのに。